コラム「子どものころの習い事に再挑戦」
カテゴリー:コラム  2014/09/14

東京地方裁判所 49期
裁判官(匿名)

 私は、裁判官になって20年近くになろうとしていますが、日々の仕事をするうえで欠かせないと思っているのは、できるだけ穏やかな心でいるということです。自分の気持ちが落ち込んでいたり、苛々しているという状態では、紛争の解決に当たるのは難しいように思います。私は、あまりストレスは感じにくいタイプと思っていたのですが、さすがに40歳を超えて数年ともなってくると、抱える悩みは、若いころに比べて深刻なものが多くなり、かといって気分が楽しくなるようなことも、そうそう起こるわけでもなく、気持ちの安定を保つにはどうしたら良いかと思っていました。そこで見付けたストレス解消法がピアノです。

 私は、子どものときにピアノを習ってはいたものの、ブランクは相当なものでしたし、ピアノは家で練習する必要がある習い事なので、そもそも練習時間が取れるのかなど不安はありました。しかし、かなり大きくなったとはいえ、子どもがいながら仕事をしている以上、忙しいのは今後も変わらないだろうと思ったのと、続けられなければすぐに止めれば良いと思い、約1年前に軽い気持ちで始めてみました。実際、習い始めてみると、毎日練習することは到底かなわず、週末と早く帰れた平日に少し弾けるという程度です。しかし、家での練習がほとんどできていなくても、子どものときのように先生から叱られるわけでもないから気楽ですし、先生の所に行っている日は、若くて素敵な先生からの注意を聞いているだけでも幸せな気分になります。何回やっても弾けるようにならず、もう無理かと思った部分が弾けたときなどは、思わず手を叩いて大喜びしてしまい、こういう種類の喜びは、久しく味わっていなかったなと実感しました。また、子どものときからさして上手ではなかったのが幸いして、以前とあまり変わらずに指が動いてくれたのも意外でした(ただ、暗譜はなかなかできず、記憶力の衰えは非常に痛感しています。)。そして、何よりのストレス解消の効用は、裁判官として仕事をしているときとは正反対に、思う存分、感情を表現できることです。

 私の今の夢は、このまま細々とピアノを続けて、ピアノが弾けるおばあちゃんになることです。皆様も、お忙しい毎日だと思いますが、子どものころに少しはやっていたこと、又は全く新しいことに挑戦してみたいという気持ちがよぎったら、とりあえず始めてみるのはとてもお勧めです。本業にもプラスの効果があるのではと思いますよ。